便潜血検査と血便
便潜血検査は健康診断や人間ドックで大腸がんのスクリーニング検査として行われることがよくあります。この検査では肉眼ではわからないほど微量の血液が便に含まれていないかを調べています。便潜血検査の陽性は消化管のどこかで出血が起こっていることはわかりますが、大腸がんがあるかどうかは大腸カメラをしてみなければわかりません。
大腸がんは血便の症状を起こすことがありますが、便潜血検査陽性で大腸カメラを受けた場合、大腸がんが発見されるのはわずか数%とされおり、陽性の原因として最も多いのは痔です。ただし、20〜30%程度に大腸ポリープが発見されています。大腸ポリープは放置しているとがん化して大腸がんの原因になることから前がん病変と呼ばれており、ポリープの段階で切除することで将来の大腸が予防につながり、当院では発見した大腸ポリープをその場で切除する日帰り手術が可能です(ポリープの大きさや出血リスク(抗凝固薬や抗血栓薬の内服)によって日帰り手術にならない場合があります)。また、大腸カメラは便潜血検査では症状がない早期の微細ながんの発見にも有効です。大腸がん以外にも多くの大腸疾患の確定診断が可能ですので、便潜血検査陽性になった場合は早めにご相談ください。
大腸がんとは
最新のがん統計では、罹患者数で大腸がんがトップになっており、がんによる死亡者数でも2位となっています。早期発見できれば完治可能ですが、早期の大腸がんには自覚症状が乏しいこともあって進行してから発見されることが多く、死亡者数が上位になっていると考えられています。
大腸がんは大腸ポリープから発生することが多く、大腸ポリープを切除することで将来の大腸がん予防にもなります。大腸カメラは早期の微細な大腸がんや前がん病変の大腸ポリープを発見できる検査であり、早期発見や予防に有効です。
便潜血検査陽性を指摘されたら
便に微量の血が混じっていると、便潜血検査で陽性になります。消化管喉こかから出血しているということであり、出血の原因を確かめるためには大腸カメラ検査が必要になります。
以前は造影剤を使ったX線検査が主に行われていましたが、精度が低く、疑わしい部分があった場合には別途大腸カメラ検査を行わないと確定診断ができないことから、当院では最初から大腸カメラ検査を行っています。
大腸カメラについて
大腸カメラは、大腸がんやいずれ大腸がんになる可能性がある前がん病変の大腸ポリープを発見できる検査です。最近は大腸CT検査も普及してきましたが、平坦な病変は発見できない、ポリープが見つかっても切除できないため結局大腸カメラをやらなければいけないなどのデメリットがあります。一方で大腸カメラは大腸全域の粘膜を詳細に確認でき、微細な病変や平坦な病変なども確認できます。また、検査中に組織を採取できますので、病理検査を行うことで幅広い疾患の確定診断が可能になります。さらに前がん病変の大腸ポリープを発見した場合には、その場で切除する手術を行うことで将来に大腸がん予防につなげることもできます。当院では検査中の大腸ポリープ切除を行っており、入院の必要がなく、事前の食事制限や下剤の服用も1回ですみます(ポリープの大きさや出血リスク(抗凝固薬や抗血栓薬の内服)によって日帰り手術にならない場合があります)。
当院ではすべての検査を内視鏡専門医が行っております。また希望により鎮痛剤や鎮静剤を使って患者様がリラックスした状態で受けていただけるようにしております。
将来の健康のために結果を生かしましょう
消化管からの出血によって便潜血検査は陽性になります。消化管からの出血は様々な疾患で生じますので、大腸カメラを受けることで原因を確かめることが重要です。どのような病気であっても早期に発見できる可能性が高く、陽性をきっかけに大腸カメラを受けることは将来の健康に生かせます。
便潜血検査陰性の方へ
大腸がんや前がん病変の大腸ポリープがあっても便潜血検査が陰性になることは珍しくありません。大腸がんやポリープは、硬い便が表面を擦ることで出血を起こしますので、やわらかい便が通過する場所に病変がある場合や、病変が平坦で小さい場合には出血を起こさないことが多いのです。
便潜血検査が陰性になった場合も、大腸がんや前がん病変の大腸ポリープが存在する可能性がありますので、発症リスクが高くなる40歳を超えたら症状がなくても大腸カメラを受けるようお勧めしています。