便秘とは
便秘は何日も便が出ない状態だけでなく、強くいきんでも少ししか出ない、排便感があるなど、スムーズな排便ができていない状態を幅広く含みます。女性に多い症状ですが、男性も加齢によって便秘を起こしやすくなることがわかっています。
便秘は食生活や運動不足など日常的な原因でも生じますが、疾患の症状として生じていることもあります。また、便秘が続くことで大腸疾患や痔などの発症・悪化リスクも上昇します。市販薬や浣腸などで解消していると十分な効果が得られなくなることが多いので、慢性的な便秘症状がある場合には消化器内科を受診して原因を確かめ、適切な治療で改善して再発を防ぎましょう。
便秘の種類
便秘を生じさせる原因は多岐に渡ります。主な原因によって、機能性便秘(弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘)・器質性便秘・症候性便秘・薬剤性便秘に分けられます。器質性便秘・症候性便秘・薬剤性便秘は疾患や服用する薬の副作用として現れる便秘です。
機能性便秘
大腸機能に異常が生じて便秘になっています。消化管の機能をコントロールしている自律神経はストレスなどの影響を受けやすいため、発症にはストレスが大きく関与することがあります。どの機能が異常を起こしているかによって弛緩性・痙攣性・直腸性に分けられます。
弛緩性便秘
消化管を動かして内容物を先に送る蠕動運動が低下することが原因で生じます。加齢による筋力低下や生活習慣によって起きると考えられています。
痙攣性便秘
蠕動運動が乱れて便の通過が遅くなって生じます。消化管の機能をコントロールしている自律神経の乱れが関与していると考えられています。
直腸性便秘
便意を我慢する習慣があると、直腸に便がたまっても便意が起きにくくなり、直腸で便が大きなかたまりになってしまい、便秘を生じます。便意は最もスムーズな排便ができる状態を知らせるサインでもありますので、便意があったらすぐにトイレに行く習慣をつけることが重要です。なお、温水洗浄便座の水流で肛門内が刺激されて神経が鈍くなり、直腸性便秘を発症するケースもあります。
器質性便秘
大腸がんやクローン病による狭窄、女性の直腸瘤、腹部手術後の癒着などで便の通過が妨げられて生じます。原因疾患の治療が必要であり、早急な受診が必要です。
症候性便秘
全身疾患の症状として生じている便秘です。甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症、糖尿病など神経の不調によって生じる場合もあります。
薬剤性便秘
薬の副作用として生じる便秘です。喘息や頻尿、パーキンソン病などで処方される抗コリン薬、咳止め、抗うつ薬などで生じることがあります。こうした薬の服用をはじめて便秘症状が現れた場合には主治医に相談しましょう。
便秘の症状を起こす消化器疾患
大腸がん、難病指定されている潰瘍性大腸炎・クローン病、過敏性腸症候群、腸閉塞など、便秘の症状を起こす疾患には、早急に適切な治療を必要とする消化器疾患が少なくありません。
大腸がんは進行していくにつれて便秘を起こすことがあります。突然、便秘を繰り返すようになった場合にはこうした疾患が疑われますので早めにご相談ください。
また原因疾患がない場合でも、便秘を慢性的に繰り返すと大腸憩室症や痔が悪化する可能性があります。
便秘は消化器内科の専門性が高い適切な治療で改善できますので、気軽にご相談ください。
便秘の検査・治療方法
問診で症状の内容や起こる頻度、便秘が起こりはじめた時期や症状の変化、既往症や服用している薬、ライフスタイル、特にお悩みの点などについて伺います。血液検査、大腸カメラ、腹部超音波(エコー)検査などから必要な検査を行った上で総合的に判断し、現在の状態をわかりやすくお伝えしています。
大腸カメラは、大腸粘膜全域を詳細に観察して微細な病変の発見も可能であり、大腸の形状に問題がないかも確かめることもできます。また、検査中の組織採取が可能ですので、病理検査によって多数の疾患の確定診断も可能になります。病変の状態や範囲などを正確に把握できるため、治療にも大きく役立ちます。原因として疾患が疑われる場合に有効な検査です。
治療
原因疾患がある場合はその治療を行います。機能に問題があって便秘になっている場合には、薬物療法に加え、生活習慣の改善も重要になってきます。水分や食物繊維をしっかりとって、習慣的に運動するなどの一般的な内容も大切ですが、正しい排便習慣を身に付けることも必要です。便意があったらすぐトイレに行くなどの排便習慣は便秘の再発防止にも役立ちます。
薬物療法では、便の水分量を増やす薬、腸内の水分量を増加させる薬などがあり、漢方薬の併用も可能です。新しい作用を持った薬も登場しており、患者様の状態や体質、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた処方が可能になっています。